2020.03.19
日本人はもともと肺炎で亡くなる人が多い① [薬学博士からのアドバイス]
脳科学的栄養学No.97
◇日本人はもともと肺炎で亡くなる人が多い①
世界中で拡大が続く新型コロナウイルス感染症。
日本でも先週、あらたに非常事態宣言が可能になる法律の改正が成立しました。
この新型ウイルスに感染した場合、多くは、風邪のような症状だけで済む場合がありますが、なかには肺炎を発症して致死に至るケース見られます。
有効な抗ウイルス剤も開発されていないところから不安は募るばかりです。
こうした状況で一番大切なのは、前回もお伝えしましたがこの感染症を正しく理解することにあります。
特に「肺炎」については、だれもがその病名は知っているが、専門家でない限りこの肺炎を理解している人は少ないでしょう。
実は、今回の新型コロナウイルスに限らず、日本人はもともと肺炎で亡くなる人が多い身近で怖い病気でもあるのです。
そこで、今回から肺炎を含む呼吸器疾患のエキスパートとして知られる池袋大谷クリニック院長の大谷義夫先生の解説を参考にしてお伝えしていきます。
さて、前回までは新型コロナウイルス感染症について、現時点で分かっていることとして、感染しても、8割は風邪のような症状だけで回復すること、命を落とすことがあるのはウイルスが肺にまで侵入し、いわゆる「肺炎」を起こしてしまった場合だということをお伝えしてきました。
先にも触れましたが、日本人は肺炎で亡くなる人はもともと多いのです。
厚生労働省の「平成30年(2018)人口動態統計」によると、日本人の死因のトップはがんで約37万人ほど、次いで心疾患約21万人になっています。
一方、肺炎の2死者数は9万5千人で、日本人の死因の第5位ですが、肺炎の一種である誤嚥性肺炎3万8千人の、両方を合わせると13万人超と。
これは、死因別に見た日本人の死亡数で、がん、心疾患に続く第3位の数になるのです。
大谷先生は「医学の進歩で、がんが不治の病でなくなりつつある一方、肺炎で亡くなる人は増えています。
肺炎で亡くなる人は、実は統計以上に多い。がん患者が肺炎を起こして亡くなった場合、死因はがんになります。
心疾患にしても、気管支炎や肺炎を合併して心不全を起こす方が多いのです」と語っておられます。
つまり、肺炎は、日本人にとって身近な怖い病気だということです。
特に、肺炎は健康に気をつけ、長生きしてきた高齢者にとって、命を落とす可能性が高いのです。
前回もお話ししましたが、新型コロナウイルス感染症が拡大している今こそ、肺炎を「正しく知ること」で、あわてることなく「正しく恐れられる」ようにしていきたいものです。
繰り返しになりますが、肺炎とは「肺に炎症が起こる」病気です。
アレルギー性もありますが、多くは気道から侵入した細菌やウイルスによる感染症なのです。
ですから、からだの免疫が正常に働いていれば、細菌やウイルスを肺にまで入れてしまうことはめったに起こりません。
なぜなら、気道の表面には細かい線毛が生えており、絶えず侵入してくる微細な異物をキャッチして押し出してくれています。
また、気道の表面にあるセンサーが異物を感知すると、脳から咳中枢に伝わり咳をすることで吐き出させています。
ですから、通常、病原体は上気道(喉頭より上)で炎症を起こす程度で、なかなか下気道(気管から肺)まで入れません。
もともとウィルスは自力で増殖することはできないので上気道炎、すなわち風邪をひかせる程度で、2週間ほどで鎮静化してしまう場合がほとんどです。
しかし、のどの防御能力が低下して病原体が肺まで侵入したり、誤嚥によって細菌が肺に直接侵入したりすると、肺に炎症が起超す場合があるのです。
この免疫力は年齢とともに衰えていくことが知られてます。一般に40代になると思春期の半分に、70代になると10%にまで落ちるとも報告されています。
したがって高齢者が肺炎を起こしやすくなるというわけです。
その意味でも新型コロナウィルスに最も気をつけなければならないのは高齢者ということになります。
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