2020.10.01
飲酒の影響でがんが発生しやすい部位は [薬学博士からのアドバイス]
脳科学的栄養学No.125
◇飲酒の影響でがんが発生しやすい部位は
今や日本人の2人に1人が「がん」にかかる時代になってきました。
私たちが日々楽しんでいるお酒もがんのリスクを高める要因の1つです。
2019年末に東京大学で発表された論文では、日本人において少量の飲酒でもがんのリスクになると報告されています。
飲酒による影響が大きいのは「どの部位のがん」なのか、そしてがんのリスクを少しでも小さくするために飲酒面で注意すべきことはなにか、まとめてみました。
以前の記事で、日本人を調査対象とした少量飲酒とがんの罹患リスクの研究によって、たとえ少量であっても、飲酒年数を重ねていけば、がんの罹患リスクが上がることが分かったとお伝えしました。
具体的には、1日、日本酒1合(純アルコールにして23g)の飲酒を10年間続けることで、お酒を全く飲まない人に対し、何らかのがんに罹るリスクは1.05倍上がるという(Cancer. 2020;126(5):1031-1040.)。
1.05倍というと、リスクが小さいように思うかも知れませんが、これは1合相当のお酒を10年間飲み続けたケースでの値であり、20年、30年と飲み続ければリスクは上がっていくことに。
例えば、20歳から1日2合相当のお酒を30年飲み続けていれば、そのリスクは1.3倍以上になるのだから、決して無視できる数値ではない。日々飲み続けている人は、ちょっぴり気になったのではないですか?
さらに、一口にがんといっても、肺がん、胃がん、肝臓がんなど、さまざまな部位のがんがあることも忘れてはならない。飲酒により影響を受けやすい部位と、受けにくい部位があるだろうなということは考えられますよね。
果たしてどのがんのリスクが高くなるのか、気になるところです。
東大の研究結果では、最もリスクが高かったのは「食道がん」で、そのリスクは1.45倍に。
また、「口唇、口腔及び咽頭がん」も1.10倍という結果が出ています(咽頭は口腔と食道の間にある器官)。
元々飲酒によってがんのリスクが上がるのは、食道より上部の器官、つまり「お酒の通り道」になるところと言われていますが、研究結果でもその傾向が見られます。なお、気管と咽頭をつなぐ器官である「喉頭」のリスクも1.22倍と高い。
念のため補足すると、これらのリスクはいずれも、1日、日本酒1合(純アルコールにして23g)相当の飲酒を10年間続けた時点(10drink-year)におけるデータです。ですから飲酒期間がより長くなり、飲酒量が多くなれば、ほとんどの部位でがんのリスクは着実に上昇してきます。
最も顕著な食道がんの場合は、1日1合の飲酒を10年間で1.45倍だったリスクが、1日2合で30年間なら4倍を超えるといいます。
つまり、少量の飲酒であっても、がんの罹患リスクが上がることが明らか。
こうした事実を踏まえても、酒好きが「酒を完全にやめる」というのは難しい…。
せめて、がんのリスクができるだけ上がらないお酒の飲み方を実践したいところですね。
そこで、がんの罹患リスクをできるだけ上げない飲み方があるのでしょうか。
醸造酒や蒸留酒といったお酒の種類を変えるといった対策はアリなのか調べてみました。
すると、最も着目すべきポイントは「お酒の総量」、お酒の種類うんぬんより酒量だということが判明しました。
アルコールそのものに発がん性があり、さらにアルコールの代謝副産物であるアセトアルデヒドもがんの原因となることが分かっています。
私たち日本人は遺伝的にアセトアルデヒドの分解能力が低い人が一定数いますから、少量でも影響を受けやすいのです。
このことから、飲み始めた年数から今に至るまでどれだけアルコールを飲み、そのリスクにどれだけさらされてきたかが重要とわけです。
薄々想像できたこととはいえ、結局のところ、お酒の量を減らす、それに尽きるということ。
ガックリ肩を肩を落とした方はいらっしゃいませんか(^^)/
すなわち、「お酒は少量でもがんのリスクになる。飲まないに越したことはないと」というのが結論ですが、実際のところ、お酒好きの人がお酒を完全にやめることは、なかなかできませんよね。
しかし、こうした情報を知っているのと、知らないのとではお酒に対する「意識」が違ってくるのではないでしょうか
。
1日1合程度という適量を目標に、飲む量は減らしたほうがいい。「総量」に留意し、今飲んでいる量より「少しでも減らす」ことを目標にしていくことをお勧めします。
なお、これまでのプチ知識として
①お酒を飲むことが習慣化しないようにする
②飲まない日「休肝日」をつくり、飲まない日貯金をする。
③お酒をストレス発散の道具にしたり、睡眠導入剤代わりにしなし。
④お酒と一緒に水を飲むこと。血中アルコール濃度の急激な上昇を抑制する効果とアルコールによる脱水を予防する効果。
⑤一気に飲まない(ゆっくり飲む)
⑥酒だけを飲まずに食べ物も一緒にとる、といったこともあわせて頭に入れておいてください。
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